「赤目四十八滝心中未遂」から学ぶ光と闇

主に尼崎を舞台として、繰り広げられる小説「赤目四十八滝心中未遂」は、純粋な恋愛小説である反面、社会の闇がリアルに描かれた作品です。尼崎の他にも、実在する地名が多く登場し、特に関西方面に住んでいる読者は、生々しく情景を描きながら、読み進めることができます。

特に部屋の描写はリアルで、情景が思い浮かぶだけでなく、においまでもが感じられるようでした。狭い一室で主人公は、人の優しさに触れ、理不尽な暴力を受けながらも、恋をします。

その恋ははじめ、主人公の胸に秘めているだけのものでしたが、彼女を知れば知るほど、想いは深くなっていき、そして、危険を顧みずに彼女と心中することを決意します。

しかし、心中するふたりとはいえ、全く悲観的な描写はなく、むしろ状況をどこか楽しみながら、過去の思い出を話す姿に、つい、ふたりの旅やこれからを応援したくなってしまいます。

特にタイトルにもある「赤目四十八滝」を巡るシーンは、実際にその場所に訪れているような、涼しげで、静かな雰囲気に、癒されるような気さえします。

たった一度の燃えるような、しかし、成就することのなかった悲恋は、切ないものではありましたが、どこか吹っ切れた主人公に共感し、不思議と読み手を前向きな気持ちにさせてくれます。