『わしらは怪しい探検隊』は無骨な男の繊細な視線が生きているエッセイ

『わしらは怪しい探検隊』は椎名誠氏の野外キャンプにまつわるエッセイです。椎名誠氏が主宰する「東日本何でもケトばす会」は、毎年テントを張って屋外で寝泊まりして自炊します。テントを張るのは離島です。民宿があっても、民宿には泊まらず、テント生活をすることに、椎名誠氏は意味を見出しています。メンバーはいずれも男性で、最年少は中学生のフジケンです。

『わしらは怪しい探検隊』は、椎名誠氏がこだわっていた野外生活が、いよいよ無理になってきた年の出来事を記したものです。メンバーは、以前から民宿に一泊することを提案してきました。しかし、隊長の椎名誠氏は、隊員の申し出を頑としてはねつけてきました。その態度に変化が生じ、民宿をすることにして、テントを畳む経緯が記されています。

椎名誠氏は、夏風邪による体調不良を理由として自覚していますが、他の隊員は、隊長に年齢の波が押し寄せていることを、半ば寂しく認めます。

中年を迎えた男の温かい視線が生きるのが、最年少隊員フジケンのその後の描写です。フジケン少年は、家庭の事情から椎名誠氏たちと生活の基盤を異にするようになります。椎名誠氏は案じながらも、無理に立ち入ろうとはしません。そんな椎名誠氏の前に疾風のようにフジケンが現れて、一瞬のちに消えてしまいます。しかし、椎名誠氏は少年にガールフレンドが出来たのに気づき、その女性の存在を「赤い花が咲いたように」と記して祝しています。

『わしらは怪しい探検隊』は、無骨を気取っている男性の繊細な視線が生きているエッセイです。